C言語の学習を進める中で、「比べる」という操作は頻繁に登場します。
単に数値を比べるだけでなく、C言語の比較演算子の使い方や、特定の1文字を比較する方法、さらにはstrcmp
を使わない文字列比較のテクニックまで、その方法は多岐にわたります。
また、2つや3つの値の大小比較を行う関数はあるのか、文字列の部分一致をどう判定するのか、といった具体的な疑問も生じるでしょう。
さらに学習が深まると、C言語で割り算のあまりを求めるにはどうすればよいか、C言語の弱点は何ですか、といった言語の特性や、C++が“使ってはいけないプログラミング言語”だと言われるのはなぜか、C言語とJavaどっちが難しいのか、といった他の言語との比較にも関心が向かうかもしれません。
この記事では、C言語で何かを「比べる」ための様々な方法と、それに関連する知識を網羅的に解説します。
- C言語における数値の比較方法
- 文字や文字列を比較する関数の使い方
- C言語の特性や他言語との違い
- 比較処理を実装する際の注意点
本記事の内容
C言語で値を比べる基本的な方法
- 比較演算子の使い方
- 大小比較する2つや3つの関数
- 割り算のあまりを求めるには?
- 文字を比較する1文字のケース
- 文字列比較でstrcmpを使わない方法
- 文字列で部分一致を比較する方法
比較演算子の使い方
C言語で2つの数値を比較する場合、比較演算子を使用するのが基本です。
これらの演算子は、主にif
文などの条件分岐で使われ、2つの値の関係が正しいか(真)、間違っているか(偽)を判断した結果を返します。
C言語では、判定結果が真の場合は1
、偽の場合は0
として扱われるのが一般的です。

主な比較演算子
C言語で利用できる主な比較演算子は以下の通りです。
演算子 | 意味 | 使用例 | 説明 |
---|---|---|---|
== | 等しい | a == b | aとbが等しい場合に真 |
!= | 等しくない | a != b | aとbが等しくない場合に真 |
> | より大きい | a > b | aがbより大きい場合に真 |
< | より小さい | a < b | aがbより小さい場合に真 |
>= | 以上 | a >= b | aがb以上の場合に真 |
<= | 以下 | a <= b | aがb以下の場合に真 |
これらの演算子を用いることで、プログラムの流れを条件に応じて制御できます。
代入演算子との混同に注意
初心者が陥りやすい間違いとして、比較演算子==
と代入演算子=
の混同が挙げられます。
=
は右辺の値を左辺の変数に代入するための演算子であり、比較を行うものではありません。
例えば、if (a = 10)
と記述すると、これは「もしaが10と等しければ」という意味にはなりません。
この場合、変数aに10が代入され、その代入式全体の結果である10
(0以外の値)がif
文の条件となります。
C言語では0以外は真と判定されるため、この条件式は常に真と評価され、意図しない動作を引き起こすバグの原因となります。
比較を行う際は、必ず==
を使用するように習慣づけることが大切です。
大小比較する2つや3つの関数
C言語の標準ライブラリには、2つや3つの数値を直接引数にとって、その中の最大値や最小値を返すような専用の関数は用意されていません。
なぜなら、C言語に備わっている比較演算子と論理演算子を組み合わせることで、そのような処理を柔軟に記述できるからです。

2つの値の大小比較
2つの値の大小を比較する場合は、if-else
文や三項演算子を使うのが一般的です。
例えば、if (a > b)
と記述すれば、a
がb
より大きい場合の処理を記述できます。
3つ以上の値の大小比較
3つ以上の値を比較する場合は、論理演算子&&
(AND)を活用します。
例えば、3つの変数a
, b
, c
の中で最大値を見つけたい場合、以下のように考えられます。
if (a >= b && a >= c)
この条件式は、「a
がb
以上であり、かつa
がc
以上である」場合に真となります。
このように、複数の比較を組み合わせることで、3つ以上の値の中から最大値や最小値を見つけ出すロジックを構築可能です。
もし、プログラム中で頻繁に大小比較を行うのであれば、自分で関数を作成(自作関数)するのも良い方法です。
処理を関数としてまとめておくことで、コードの再利用性が高まり、可読性も向上します。
割り算のあまりを求めるには?
C言語で整数同士の割り算のあまりを求めるには、%
(剰余演算子)を使用します。
この演算子は、左辺の値を右辺の値で割った際の余りを計算して返します。
例えば、10 % 3
という式は、10を3で割った余りである1
を結果として返します。
この剰余演算子は、ある数値が偶数か奇数かを判定したり、特定の範囲で数値を循環させたりする際など、プログラミングの様々な場面で活用される非常に便利な演算子です。

剰余演算子の注意点
剰余演算子を使用する際には、いくつかの注意点があります。
まず、%
演算子は整数型(int
, char
, long
など)のオペランドにしか使用できません。
float
やdouble
といった浮動小数点数に対して使用しようとすると、コンパイルエラーになります。
浮動小数点数の余りを求めたい場合は、<math.h>
ヘッダをインクルードしてfmod()
関数を使用する必要があります。
また、オペランドに負の数が含まれる場合の挙動は、C89/C90の規格では処理系定義(コンパイラの仕様に依存する)とされていました。
しかし、C99以降の規格では、計算結果の符号は左辺のオペランド(割られる数)の符号と同じになるように規定されています。
例えば、-10 % 3
の結果は-1
となります。
互換性を考慮する場合は、使用しているコンパイラの規格を確認すると良いでしょう。
文字を比較する1文字のケース
C言語で特定の1文字を比較する場合、数値と同じように比較演算子(==
や!=
など)を直接使用できます。
これは、C言語においてchar
型の文字データが、内部的には整数値として扱われているためです。
この整数値は文字コードと呼ばれ、一般的にはASCII(アスキー)コードが用いられます。

例えば、'A'
という文字はASCIIコードで65、'B'
は66というように、各文字に一意の番号が割り当てられています。
このため、char c = 'A';
という変数がある場合、if (c == 'A')
という条件式は、c
の持つ文字コードと'A'
の文字コードを比較することになり、意図通りに動作します。
同様に、if (c > 'A')
のような大小比較も可能です。
これは、アルファベット順の判定などに利用できます。
ただし、注意点として、大文字と小文字は異なる文字コードを持つため、厳密に区別されます。
例えば、'A'
(ASCIIコード65)と'a'
(ASCIIコード97)は等しくないと判定されるため、大文字小文字を区別せずに比較したい場合は、tolower()
やtoupper()
といった関数を使って文字をどちらかに統一してから比較する工夫が必要です。
文字列比較でstrcmpを使わない方法
C言語で文字列を比較する際には、<string.h>
で定義されているstrcmp()
関数を使用するのが一般的ですが、この関数を使わずに比較処理を自前で実装することも可能です。
strcmp()
を使わない方法は、C言語における文字列の仕組み、つまり「文字の配列であり、終端がヌル文字(\0
)で示される」という本質的な構造の理解を深める上で非常に良い学習になります。

具体的な実装方法としては、while
ループやfor
ループを用いて、2つの文字列の先頭から1文字ずつ文字コードを比較していきます。
ループの継続条件は、「両方の文字列の対応する文字が等しく、かつどちらの文字もヌル文字ではない」というものになります。
もし、ループの途中で異なる文字が見つかった場合は、その時点で2つの文字列は等しくないと判断できます。
ループがどちらかの文字列の終端(ヌル文字)に到達するまで続けば、そこまでの文字はすべて等しいということになります。
最終的に、両方の文字列が同時にヌル文字に到達した場合にのみ、2つの文字列は完全に等しいと結論づけられます。
このように自前で実装することでポインタや配列操作のスキルが向上しますが、実用的なプログラムでは、標準ライブラリであるstrcmp()
を利用する方が、コードが簡潔になり、多くの場合で最適化されているため高速かつ安全です。
文字列で部分一致を比較する方法
C言語で文字列の中に特定の文字列(部分文字列)が含まれているかどうか、つまり部分一致を比較・検索するには、<string.h>
ヘッダで提供されているstrstr()
関数を使用するのが最も簡単で効率的です。

strstr()
関数は、第1引数に指定された文字列の中から、第2引数に指定された部分文字列が最初に現れる場所を探します。
部分文字列が見つかった場合、strstr()
はその場所を指すポインタを返します。
もし、部分文字列が見つからなかった場合は、ヌルポインタ(NULL
)を返します。
この返り値を利用して、部分一致の有無を判定できます。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
int main(void) {
char *str = "This is a sample string.";
char *sub_str = "sample";
if (strstr(str, sub_str) != NULL) {
printf("部分文字列が見つかりました。\n");
} else {
printf("部分文字列は見つかりませんでした。\n");
}
return 0;
}
このコード例では、strstr()
の返り値がNULL
でないことを確認することで、str
の中にsub_str
が含まれているかを判定しています。
strstr()
関数は、大文字と小文字を区別することに注意が必要です。
もし大文字小文字を区別せずに検索したい場合は、検索対象の文字列と部分文字列をすべて大文字または小文字に変換してからstrstr()
を呼び出すといった前処理が必要になります。
他言語とC言語を比べる際のポイント
- C言語の弱点は何ですか?
- C++が“使ってはいけない”と言われるのはなぜ?
- C言語とJavaどっちが難しい?
- まとめ:C言語で比べる対象と方法を理解
C言語の弱点は何ですか?
C言語は非常に強力で効率的な言語ですが、いくつかの弱点も存在します。
これらを理解することは、C言語を適切に活用する上で大切です。

主な弱点として挙げられるのは、メモリ管理の複雑さとそれに起因するセキュリティ上のリスクです。
C言語では、プログラムが動的に使用するメモリ領域をmalloc()
関数などで確保し、不要になったらfree()
関数で解放するという一連の操作を、プログラマが手動で行わなければなりません。
このメモリ管理を誤ると、メモリリーク(解放忘れによりメモリを浪費する)やダングリングポインタ(解放済みのメモリを指し示すポインタ)といった、発見が困難なバグを引き起こす原因となります。
また、ポインタを直接操作できるため、配列の範囲外にアクセスしてしまうバッファオーバーフローといった脆弱性を作り込みやすいという側面もあります。
さらに、現代的な他のプログラミング言語と比較すると、文字列操作やネットワーク通信、GUI開発などをサポートする標準ライブラリの機能が限定的であるため、開発の生産性が低いと感じられる場面があるかもしれません。
ただし、これらの弱点は、ハードウェアに近い低レイヤーを直接制御できるというC言語の最大の強みの裏返しでもあります。
C++が“使ってはいけない”と言われるのはなぜ?
「C++が“使ってはいけない”プログラミング言語だ」という表現は、しばしば耳にすることがありますが、これは文字通りC++が全面的に劣っているという意味ではありません。
この言葉の真意は、C++の持つ圧倒的な複雑性と学習コストの高さから、プロジェクトの目的やチームのスキルセットによっては「避けるべき選択肢となりうる」という警告として語られることが多いです。

C++は、C言語の機能に加えて、オブジェクト指向、テンプレート、例外処理、ラムダ式といった非常に多くの高度な機能を持っています。
これらの機能をすべて正しく理解し、使いこなすのは非常に困難です。
多機能であるがゆえに、意図しない動作を引き起こす「未定義動作」の落とし穴も多く、メモリ管理に関しても、RAIIやスマートポインタといった仕組みを正しく利用しないと、C言語と同様の問題に直面します。
このため、小規模なツール開発やWebアプリケーションのバックエンドなど、他のよりシンプルな言語で十分に目的を達成できる場面で、あえてC++を選択することは、過剰な複雑さを持ち込み、開発効率やメンテナンス性を低下させる可能性があるのです。
もちろん、ゲーム開発やHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、リアルタイム性が要求される金融システムなど、C++のパフォーマンスと機能性が不可欠な分野は数多く存在します。
したがって、この言葉は「C++は万能薬ではない」という、適材適所を考える上での重要な指摘と捉えるのが適切でしょう。
C言語とJavaどっちが難しい?
「C言語とJavaどっちが難しいか」という問いに対する答えは、何を「難しい」と捉えるかによって変わりますが、一般的には、コンピュータの動作原理に近い低レイヤーの概念を直接扱うC言語の方が、プログラミング初心者にとっては難しいとされています。

両者の難易度を分ける最も大きな要因は、メモリ管理とポインタの有無です。
比較項目 | C言語 | Java |
---|---|---|
難易度(一般論) | 高い | C言語よりは低い |
メモリ管理 | 手動 (malloc/free) | 自動 (ガベージコレクション) |
ポインタ | あり(習得が難しい概念) | なし(内部的には参照として扱う) |
実行環境 | OSに直接依存 | JVM(プラットフォーム非依存) |
主な用途 | 組込みシステム、OS、高速処理 | Webアプリ、業務システム、Androidアプリ |
前述の通り、C言語ではプログラマがメモリの確保と解放をすべて手動で行う必要があります。
これに対し、Javaにはガベージコレクションという仕組みがあり、不要になったメモリを自動的に解放してくれるため、プログラマはメモリ管理を意識する必要がほとんどありません。
また、C言語の学習における最大の壁の一つである「ポインタ」は、メモリのアドレスを直接操作する強力な機能ですが、概念の理解やデバッグが非常に困難です。
Javaにはポインタという概念がなく、プログラマが直接メモリを操作することはありません。
これらの理由から、プログラミングのロジックそのものに集中しやすいJavaの方が、初心者にとっては学習のハードルが低いと言えます。
一方で、C言語を学ぶことで、コンピュータがどのようにメモリを扱っているかといった、より本質的な仕組みを深く理解できるという大きなメリットがあります。
まとめ:C言語で比べる対象と方法を理解
- C言語で数値を比べる際は比較演算子を用いる
- 比較演算子には
==
!=
>
<
>=
<=
がある - 代入演算子
=
と比較演算子==
の混同は頻出のバグ - 3つ以上の値の比較は論理演算子
&&
などを組み合わせる - C言語の標準ライブラリに大小比較専用の関数はない
- 割り算のあまりを求めるには剰余演算子
%
を使う %
は整数型にのみ使用でき、浮動小数点数には使えない- 1文字の比較は文字コードの比較であり
==
が使用可能 - 文字列の比較には
<string.h>
のstrcmp
関数が基本 strcmp
は2つの文字列が等しい場合に0を返すstrcmp
を使わず自作ループで比較するとC言語の理解が深まる- 文字列の部分一致を検索するには
strstr
関数が便利 - C言語の弱点として手動でのメモリ管理の複雑さが挙げられる
- C++はその複雑性から特定の文脈で「避けるべき」と言われることがある
- 一般的にC言語はJavaよりも低レイヤーを扱うため学習難易度が高い
- C言語で何かを比べる際は対象に応じて最適な方法を選択することが鍵となる